PK戦の3人目、サラーはゴール中央へふわりとボールを浮かせた。GKライアンが左へ跳んだ先で、ボールは静かにネットに収まる。豪州は先に崩れていた。1人目のスッターが枠の上へ大きく外し、4人目には18歳のヘリントンがクロスバーを叩く。最後はアブデルマギドが決めて4-2。ホイッスルが鳴ると、キャプテンのサラーは人目もはばからず涙を見せた。豪州にとっては、W杯で初めて味わうPK戦での敗退だった。
エジプトにとっては、W杯で初めて手にした決勝トーナメントの1勝だった。1934年の初出場から1990年、2018年、そして今大会まで、エジプトは長くグループリーグの壁を越えられずにいた。ノックアウトの舞台に立つのも、そこで勝つのも、これが初めてになる。グループリーグではニュージーランドを3-1で下すなど(この試合ではサラーも得点している)、着実に勝ち点を積んで16強への扉をこじ開けた。
試合そのものは、最後まで一進一退の競り合いだった。前半にアショウルがヘディングで先制すると、豪州はハニのオウンゴールで追いつく。テキサス・アーリントンのAT&Tスタジアムで、両者は120分を戦っても1-1のまま動かず、決着はPKに持ち込まれた。エジプトは主導権を握りきれない時間帯もあったが、延長でも失点をこらえ、最後の12ヤードで力を出し切った。
16強で待つのはメッシのアルゼンチンだ。各社の報道によれば、対戦は現地7月7日にアトランタのメルセデス・ベンツ・スタジアムで行われ、日本時間では8日の未明にあたる。39歳のメッシと34歳のサラー——ともに一時代を築き、今もチームの軸であり続ける二人が、直接ぶつかることになる。サラーのW杯での存在感は、リバプールで積み上げた実績に比べれば長く控えめだった。だが今大会はグループリーグから得点を重ね、エジプトを国の歴史で初めてのノックアウトの舞台へと運んできた。相手のアルゼンチンも楽な道のりではなかった。この日は初出場のカーボベルデに3-2と競り勝った、王者らしからぬ薄氷の勝ち上がりだった。今大会はここまで、前日にモドリッチのクロアチアが姿を消すなど、ベテラン世代の去就が各地で試合の行方を左右している。エジプトが自分たちより明確に格上の相手をW杯で倒したことは、これまで一度もない。世界王者アルゼンチンは、その最初の相手になるかどうかを試される立場になる。サラーにとっても、代表でのキャリアで最も大きな一夜になり得る舞台だ。
同じ7月4日には、コロンビアもガーナを1-0で下して16強入りを決めた。得点はアリアスの14分弾で、わずか8分に交代出場したばかりのスアレスがアシストした。Optaによれば、交代選手によるゴール関与としてはW杯史上最速だという。主将として先発したハメス・ロドリゲスは前半の出来がふるわず、ハーフタイムでベンチに退いた。これで決勝トーナメント1回戦の全16試合が終わり、16強の顔ぶれが出そろった。
関連リンク
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