コッリーナが名前を読み上げた
FIFAが17日に公開した映像に、その瞬間が残っている。審判委員長のピエルルイジ・コッリーナが決勝の担当者を告げると、スラフコ・ヴィンチッチは両手で顔を覆った。隣にいた同僚に抱きつき、部屋の審判団から拍手が起きた。本人は後に、震えていた、と話している。
スロベニア人がW杯決勝の笛を吹くのは初めてだ。FIFAによれば、決勝を担当した主審は歴史上23人しかいない。副審は同じスロベニアのトマジュ・クランチニクとアンドラジュ・コヴァチッチ、第4審判はヨルダンのアドハム・マカドメが務める。
ルサイル、2022年11月22日
ただ、ブエノスアイレスの記者たちがこの名前で思い出したのは、涙ではなかった。
インフォバエもラ・ナシオンも、発表と同時に同じ日付を引っ張り出している。2022年11月22日、ルサイル・スタジアム。アルゼンチンがサウジアラビアに1-2で敗れた、カタール大会の初戦だ。その試合の主審がヴィンチッチだった。アルゼンチンはミリ単位のオフサイド判定で複数のゴールを取り消されている。結果的にそこから優勝まで行き着いたが、あの90分だけを見れば、アルゼンチンにとって最悪の初戦だった。
スペイン側の帳簿
同じ発表を、スペイン語圏の別の側は逆から読んでいる。
テレムンドやエクセルシオールが並べたのは、スペインはヴィンチッチの笛で負けたことがない、という記録だ。確認できる範囲では、EURO2024の準決勝でフランスに2-1、同じ大会のグループステージでイタリアに1-0。どちらも、この世代のスペインが良い出来だった日として挙げられている。
もっとも、これは発表のあとに付けられた意味でもある。主審の過去の戦績が次の90分に効くという根拠はない。それでも両国の紙面は、同じ一つの発表を反対向きの材料として使っている。
「前科」と書かれた過去
もっと強い言葉を使った媒体もある。アルゼンチンのエキソイナは、見出しに「前科」と打った。
事実関係はこうだ。2020年5月、ヴィンチッチはボスニア・ヘルツェゴビナ警察が売春・薬物・違法武器のネットワークを摘発した現場で拘束された。ただ、聴取を受けたのは証人としてで、同じ夜に起訴されないまま釈放されている。スロベニアサッカー協会は「間違った場所に、間違ったタイミングでいた」として本人を支持し、案件はそこで終わった。有罪判決は出ていない。
その後の6年で、彼は2022年のヨーロッパリーグ決勝、2024年のチャンピオンズリーグ決勝、EURO2024の準決勝を任されている。
笛の性格
判定そのものには、賛否の両方が残っている。
ESPNが挙げたのは、レアル・マドリーがバイエルン戦で見せた反発だ。カマヴィンガが1枚目をもらった直後にボールを持って数メートル離れ、遅延行為で2枚目。ジュード・ベリンガムはミックスゾーンで「冗談だ」と吐き捨て、こう続けた。「ファウル2つで、イエロー2枚だ」
一方で、ジョゼ・モウリーニョは彼を褒めている。2025年、トルコの審判を批判していた時期にガラタサライ×フェネルバフチェを任されたのがヴィンチッチだった。当時フェネルバフチェを率いていたモウリーニョは「トップの出来だった。この国だけでなく、国外の人間も大きな試合を見た。その責任を負ったのは主審だ」と話した。
規則の文言には厳しく、荒れた試合を抑える力は評価されている。メッシとラミネ・ヤマルがファウルを引き出しにくる90分で、その組み合わせがどう出るかはわからない。
今大会4試合目
ヴィンチッチにとって、決勝はブラジル×モロッコ、ヨルダン×アルジェリア(いずれもグループステージ)、メキシコ×エクアドル(32強)に続く今大会4試合目になる。カタール大会では2試合を担当した。
決勝は日本時間7月20日(月)午前4時、メットライフ・スタジアム。その前日、7月19日(日)午前6時には、マイアミで3位決定戦のフランス×イングランドがある。
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